〈第18回〉相手への優しさや配慮が「人を魅了する振る舞い」につながる

日本人が礼儀正しいと思っているお辞儀の不思議

日本人が礼儀正しいと思っているお辞儀の不思議

「人の印象の専門家」の吉武利恵です。

人の上に立つ、人を率いるリーダーこそ、人を魅了する「振る舞い」が必要だと思いませんか?

日本の礼法は、日本人としての教養の1つで、育ちの良さや教養のある印象を与えます。今回は基本の振る舞いとリーダーとしての振る舞いをご紹介します。

「美しい振る舞い」というと、「美しい動作」を思い浮かべ、特に女性に向けた言葉に感じる方が多いかもしれません。しかし、これを男性に言い換えると、「合理的で無駄のない動作」になります。省略の美とも言えますね。

世の中にあるマナー本は女性や若者が対象の本が多く、下位者から上位者へ、もしくは対等なお付き合いを想定しています。主に形や角度、回数などをマニュアルとして記したものがほとんどで、上位者から下位者に対する振る舞いを扱っている書籍は少ないのが現状です。

茶の湯の世界では「型」から入るといわれています。それは流派により型が決まっていますし、お茶会という場面も決まっているからできることです。

しかし、礼法はさまざまな相手、さまざまな場面、さまざまな時代に対応しなければなりません。1つの型だけでは対応しきれないのが現状です。

過去にマナー本を購入したことや、マナーに関してインターネットで検索した経験はありませんか? そのときの目的は恥をかかないためにマナーの手順などを確認して、安心を得ることだったのではないでしょうか。

日本の礼法は、自分が恥をかかないために安心を得るものではありません。形や角度、回数よりも先に、相手への思いやりや優しさ、配慮などの「心」がこもっている動作であるかを重要視しています。大切な相手と心を通じ合わせ、コミュニケーションを円滑にするために最も重要な役目を果たしてくれるものです。

心のこもっていないマニュアル通りのお辞儀や感謝の言葉では、人を感動させることは難しいでしょう。

(好印象に向かう振る舞いの順序)

粗暴な動作 → 心がこもっていないマニュアル通りの動作 → 心を込めた動作

お辞儀や振る舞いでその人の心の中が見えてしまう

人の上に立つ、人を率いる立場のリーダーや年配者、未来のリーダーには心を込めたワンランク上の振る舞いが求められます。振る舞いにより、周囲に対して、あなたの人となりや存在感、周囲への影響を無言で与えていることを忘れないでくださいね。

海外の方から見た日本人の印象の1つに「礼儀正しい印象」が挙げられます。その代表的な動作が「お辞儀」です。中国やアジア圏でも日本と同様に頭を下げて体を屈するお辞儀をしますが、日本人のお辞儀は、特別に捉えられているということでしょう。

海外の方が礼儀正しいという好印象を感じてくださっているのは、お辞儀からその人の心の中の言葉を読み取って感じて、感動してくださっているからではないでしょうか。

西洋の挨拶は帽子を脱いだり、握手をしたりします。動作は違いますが、挨拶の意味の本質は同じで、敵意がないこと、武器を持っていないことを表現する動作です。
お辞儀の基本動作

一連の動作は、呼吸と同じタイミングで「倒す(吸う)、止まる(吐く)、上げる(吸う)」と行うと自然なお辞儀になります。

STEP1:腰から頭まで一直線に背筋を伸ばし姿勢を正します。鉄の芯が頭の先からお尻の穴まで突き刺さっているイメージです。

STEP2:アゴを軽く引き、お腹を引っ込め、STEP1の状態で腰から、息を吸いながら前に倒します。

STEP3:適切だと思う位置で止まります。そのときに息を吐きます。

STEP4:息を吸いながら、STEP1を維持して、腰から起き上がります。

心の中にメッセージを思い浮かべながら、STEP2~4の動作を行います。

日本ではお辞儀を「礼」と表すこともあります。立った状態の「立礼」と座った状態の「座礼」を写真でご紹介いたします。

スタンダードなお辞儀

スタンダードなお辞儀

[撮影]本多佳子

①「感謝」を表す動作です。

心を込める思い:「ありがとうございます」「感謝します」

②「挨拶」では、お客さまや上位者に対する動作になります。

心を込める思い:「よろしくお願いします」

浅いお辞儀

浅いお辞儀

①会釈とも言います。「軽い挨拶」で、親しい人との挨拶や人の前を横切るときやすれ違うとき、目上の方の部屋の入退出時などの動作です。

心を込める思い:「こんにちは」「どうも」「失礼します」

②上位者が下位者に対して「感謝」を表すときに使用します。

心を込める思い:「ありがとう」

深々と頭を下げるお辞儀

深々と頭を下げるお辞儀

①最上級の「感謝」や「謝罪」の気持ちを表す動作です。

心を込める思い:「誠にありがとうございました」「誠に申し訳ございませんでした」

②「挨拶」では、とても重要な人や尊敬する人に対する動作です。

心を込める思い:「お会いできて光栄です」

意識を集中するのは、角度などの動作ではなく、心を込める思いです。その強い気持ちが自然と最適な角度に導いてくれます。それは、動作のスピードや表情にもおのずと表れます。

《お辞儀動作の重要なポイント3つ》
①お辞儀の動作の前後の表情を意識しましょう。お辞儀に込めた思いや発言との一致など、相手は真偽を表情で判断します。

②心を込めたお辞儀は1回にしましょう。ペコペコと何度も行うと、お辞儀の価値がどんどん下がってしまいます。

③立場の違いにより、お辞儀の角度に意識しましょう。対等な立場なら、相手と同じ角度に合わせます。上下関係があれば、上下関係と同じように多少角度も上下にしましょう。

聴衆の前に立つシーンがある方は、心を込めた美しい振る舞いはどの言葉よりも雄弁であることを思い出してください。

日本人の教養として、お辞儀や振る舞いを今一度意識してみませんか?

そのときは「心」を込めることを忘れないでくださいね。

最後まで、お読みくださいまして、誠にありがとうございました。日々の振る舞い、発言、行動の積み重ねが、あなたの印象をつくります。本来のあなたのポテンシャルに近づくため、印象で損しないために、ぜひ、印象のセルフマネジメントを一緒に意識し続けていきませんか?